こんにちは。エンゲージメントソリューション「WOW engage(ワオエンゲージ)」のマーケティングチームです。
今回のテーマは「オムニチャネルについて」です。
スマートフォンやソーシャルメディアの普及により、顧客の購買行動が多様化する今、企業のマーケティングにおいてオムニチャネルが注目されています。
本記事では、オムニチャネルの意味やメリットに加え、マルチチャネルやクロスチャネルなど混乱しがちな用語との違い、そして導入の具体的な手順までわかりやすく解説します。
オムニチャネルとは、顧客が店舗、Webサイト、モバイルアプリ、電話、ソーシャルメディアなど、さまざまな媒体を通じてシームレスに商品を購入できる小売りの販売戦略を指します。
また、オムニチャネルは小売りを表す「リテイリング」と合わせて「オムニチャネル・リテイリング 」とも呼ばれます。
たとえば、以下のようなことが可能になるのがオムニチャネルです。
● ECサイトで購入した商品を実店舗で受け取る
● 実店舗でECサイトの在庫状況を確認し取り寄せる
● 電話で商品を注文して実店舗で購入する
従来の小売りの形態では、一般的に店舗やオンラインショッピングなどが別々に運営されていました。しかし、オムニチャネルではこれらが一体となり、顧客に統一された買い物体験を提供している点が特徴です。
「オムニチャネル」は、「オムニ(omni-)」と「チャネル(channel)」を組み合わせた造語です。
● オムニ:ラテン語の「omnis」から派生した接頭辞で、「すべて」や「全体」を意味
● チャネル:もとは「水路」を表すラテン語だが、現在では「手段」や「経路」といった意味で主に使われる
オムニチャネルが注目を集める背景には、以下のような要因があります。
インターネットの普及 やモバイルテクノロジーの進化、デジタル決済の発展により、オムニチャネルが技術的に実現しやすくなりました。
インターネットとスマートフォンの普及により、顧客はWebサイトやSNSなどで商品の情報を手に入れてから購入するのが当たり前になりました。そのため、顧客はオンラインでもオフラインでも購入しやすい、シームレスに統合された小売システムを望むようになってきているのです。
これらの要因から、オムニチャネルは顧客満足度向上や競争力の強化など、さまざまなメリットをもたらす販売戦略として注目を集めています。
オムニチャネルと混同しやすい用語として、マルチチャネル、クロスチャネル、OMO、O2Oがあります。これらはいずれも、インターネットと実店舗など複数チャネルの販売戦略を指す用語のため、オムニチャネルとの違いがわかりにくいかもしれません。
ここでは、それらの用語とオムニチャネルとの違いをご紹介します。
マルチチャネルは、複数のチャネルを活用して顧客との接点を増やす販売戦略ですが、それぞれのチャネルが独立していることが特徴です。とくに統合性や在庫管理の考え方において、オムニチャネルと大きな違いがあります。
【統合性の考え方の違い 】
● オムニチャネル:異なるチャネルの統合が重要。
● マルチチャネル:チャネルが存在していれば統合されていなくてもよい。
【在庫管理の考え方の違い】
● オムニチャネル:在庫は異なるチャネル間で連携され、リアルタイムで管理される。
● マルチチャネル:在庫はチャネルごとに管理され、連携は必ずしも考慮されない。
クロスチャネルは、複数のチャネルが相互に連携していることに主眼を置く小売りやサービス業界の戦略です。一方、オムニチャネルは、チャネルの統合を強調しています。これらの間の一番わかりやすい違いは「顧客体験(UX)が均一化されているかどうか」という点です。
● オムニチャネル: 複数のチャネルの違いを顧客に感じさせず、シームレスな顧客体験を通して同一のブランドとして認識させること。実店舗、EC、アプリなど、どの媒体を使うユーザーに対しても一貫したサービスの提供を実現できている状態を指す。
● クロスチャネル:複数のチャネルを持ちながら、それぞれのチャネルで顧客や在庫のデータを共有している状態のこと。しかし、データ連携はされていても各チャネルの機能や顧客体験はまだ分断されている。たとえば、実店舗の購入で獲得したポイントはECでは利用できないなどの場合もある。
OMO(Online Merges with Offline)は、オフラインをオンラインに一体化するというサービスのコンセプトです。オムニチャネルは購買の各チャネルを統合する小売りの手法ですが、OMOはユーザーのあらゆる体験をオンラインとオフラインでシームレスにつなげることを主軸としています。
● オムニチャネルのテーマ:購買の各チャネルを統合すること。
● OMOのテーマ:ユーザーのあらゆる体験をオンラインとオフラインでシームレスにつなげること。
OMOとオムニチャネルは結果的に同じようなサービスになる場合がありますが、どちらかというとOMOの方が広い概念です。よってOMOであってオムニチャネルでないサービスが存在します。
代表的な例として、ファーストフード店などが導入している「モバイルオーダー」が挙げられます。 これは、スマートフォンで事前に注文と決済を行い、店舗で商品を受け取るサービスです。オムニチャネルで必要となる「ECサイトとの統合」や「在庫の共有」といったチャネルの統合とは関係なく、オンラインとオフラインをシームレスにつなげ、顧客の購買体験を向上させています。
O2O(Online to Offline)は、オンラインとオフラインを結びつけ、オンライン活動がオフラインの実際の取引や体験につながる仕組みを指します。オムニチャネルのようにオンラインとオフラインの統合を目指すわけではなく、オンラインからオフラインへの顧客の誘導を目指しているのが大きな違いです。
● オムニチャネルの目的:チャネルを統合し、よりよいユーザー体験による顧客の囲い込み。
● O2Oの目的:オンラインからオフラインへの顧客の誘導。
O2Oでは、たとえば実店舗で使えるクーポンをオンラインで発行する、オンライン予約、メールやアプリのプッシュ通知でセール情報を知らせるといった、実店舗への誘導を行います。
オンラインとオフラインなど、異なる販売チャネルを統合することで、企業にはさまざまなメリットが見込めます。ここでは、オムニチャネルのメリットを具体的に解説します。
従来の小売モデルでは店舗やオンラインでの買い物が独立しており、それぞれが異なる顧客対応を提供していました。しかし、オムニチャネルのアプローチでは、これらのチャネルが一体となることで、顧客体験や顧客満足度を向上させることができます。
たとえば、オンラインで購入した商品を送料無料で実店舗にて受け取れるようにしたり、スマートフォンを店頭の電子棚札にかざすとECサイト上の購入者レビューが確認できるようにしたりするなど、より良い顧客体験を提供できるようになります。
従来の小売モデルでは、店舗やECサイトなど異なるチャネルが別々に運営されているため、支払い方法や商品の受け取り方法などもチャネルによって異なり、マーケティング戦略もチャネルごとに立てる必要がありました。
しかし、オムニチャネルはさまざまなチャネルを統合して販売戦略を考えるため、より一貫性のあるマーケティング施策が展開しやすくなります。これにより、顧客にとってもオンラインかオフラインかを気にすることなく、気軽に商品やサービスを利用できるような環境を整えられます。
従来の小売モデルでは、店舗、Webサイト、モバイルアプリなど、異なるチャネルで蓄積されたデータが分断されがちでした。しかしオムニチャネルでは、これらのチャネルが統合され、1つのデータベースに顧客データが統一されるため、より包括的な顧客分析が可能です。
これにより、購買履歴、好み、行動パターンなどさまざまなデータを一元的に分析し、個々の顧客に対してより精緻なターゲティングが可能になります。
オムニチャネルの活用には、機会損失を減らせるメリットもあります。それは、次の2つの理由からです。
1つは、さまざまなチャネルが同一の在庫の商品を扱うため、顧客がチャネルによる在庫の有無を気にせず好きな方法で購入しやすくなるためです。たとえば、店舗で商品を選んでECサイトで購入しようとしたら在庫がなくて買えなかった、といった事態を防げます。
もう1つは、ECサイトと実店舗の両方でデータを収集し詳しい行動分析ができることから、顧客へのより適切なアプローチが可能になるためです。たとえば、過去のデータから顧客の好みを分析し、それに合った新商品が発売されれば、すぐにその顧客への通知を送るといったことが、より高い精度で行えるでしょう。
オムニチャネルでは、店舗、Webサイト、モバイルアプリなど異なるチャネルが統合されると、関連するプロセスも一元化されるため業務の効率が上がります。
なかでも最大のメリットは在庫管理です。オムニチャネル化を通して店舗とオンラインストアの在庫情報が連携され、リアルタイムで在庫を正確に把握できるようになります。これにより、商品が適切に補充され、在庫切れや過剰在庫のリスクが低減し、管理の効率化が図れます。
また、ユーザーのデータも一元管理されるため、 顧客情報や購買履歴などのデータ入力や更新作業を個々のチャネルで行う必要がなくなり、効率化が可能です。くわえて、データを総合的に扱うことで、より正確な解析もできるようになります。
オムニチャネルにはさまざまなメリットがありますが、導入する際にはある程度の初期投資が必要になることを認識 しておきましょう。
まず、ソフトウェア面では、統合された在庫管理や顧客管理、さらにはオンライン注文処理システムなどが必要です。これらのシステムは顧客が異なるチャネルを通じて商品やサービスの利用を実現する、つまりオムニチャネルの根幹を支える役割を果たします。
また、物理的な面でも、店舗や倉庫の改装や拡充、POSシステムの導入などが必要となる場合もあります。
また、戦略が本格的に機能し、成果が現れるまでにはある程度の時間がかかることは理解しておく必要があります。
それでは、実際にオムニチャネル化を進めるにはどうすればよいでしょうか。ここでは、基本的な手順をご紹介します。
まず初めに、現行の販売チャネルや顧客の利用パターンを詳細に調査し、同時に競合他社が利用しているマーケット手法の状況も把握します。これにより、自社がオムニチャネル化において必要な要素や優先すべき施策が理解でき、どの顧客をターゲットにすべきかが明確になります。
サービスの状況調査をもとに、オムニチャネル化の戦略的目標を明確にし、それに基づいたロードマップを策定します。プロジェクトの範囲、スケジュール、予算、実現方法、予定される最終的な成果などをきめ細かく記載し、これらの情報を関係者と共有しましょう。ロードマップを策定することで計画全体の流れが明確になるため、プロジェクトを推進するうえでは重要な工程です。
オムニチャネル戦略の実現に向けて、組織内での役割分担や情報共有の仕組みを整えます。特に、オムニチャネル化にはECサイトと実店舗の在庫を一元管理するなど、チャネルの枠組みを越えた調整が必要です。そのため、まとめ役としてさまざまなチャネルでリーダーシップを発揮できる人材を選任しなければなりません。
さらに、中心となるスタッフは、オムニチャネルの理念を理解し、顧客の満足度の向上を目標としつつも、自社の利益とのバランスがとれるコスト意識を持っていることも必要です。
オムニチャネル化においては、現行の在庫管理方法を見直し、ECサイト、実店舗などの全チャネルで在庫情報をリアルタイムで共有できるシステムの導入が必要です。これにより、ECサイトと実店舗の在庫の一元化ができ、たとえばECサイトで注文し実店舗で受け取るといった、顧客に対して柔軟で即応性があるサービスが提供できます。
顧客情報の整理を行い、さまざまなチャネルで一貫性のあるサービスを提供できるようにします。このためには、実店舗とECサイトで別々に管理していた顧客の基本情報や購入の履歴、ポイント情報を統合し、どちらで商品を購入しても顧客情報を一元的に把握できるシステムを構築します。
また、あわせてカスタマージャーニーマップの作成も行いましょう。カスタマージャーニーマップとは、顧客がある商品やサービスを購入するまでの経験やプロセス全体を、時間軸に沿って描いたものです。顧客のペルソナや最適なアプローチ方法を明らかにすれば、オムニチャネル環境でのより効果的なサービスを開発できます。
オムニチャネル化が実現しても、それで終わりではありません。実施した施策や変更点の効果を定期的に評価し、課題や改善点を把握する、PDCAサイクルを意識した運用が必要です。これにより、システム全体を見直し、よりよいものへと進化させられます。
また、システムが思った通りに稼働するようになっても、顧客の行動やトレンドなどは変わり続けていくため、その状態が最適のままであり続けるとは限りません。常に現状の見直しを行い、市場環境の変化にも柔軟に対応できるようにしましょう。
オムニチャネルを実現するには、いくつか押さえておきたいポイントがあります。オムニチャネル化の成果をより大きくするために、特に重要な点をご紹介します。
オムニチャネル化を進める際には、異なるチャネルで異なるブランドの印象を与えないように、一貫性のあるメッセージやデザインを提供できるようにしましょう。
ブランドイメージの統一は、チャネルにかかわらず「あの商品ならこのブランド」という顧客の信頼性を高める重要な手段です。ロゴやカラー、コンテンツの方向性など、ブランドにかかわる要素を調整し、異なるチャネルでも同じ価値観やメッセージを伝えるよう心掛けましょう。
オムニチャネルのコンセプトは、顧客がオンライン、店舗、モバイルなど複数のプラットフォームを自由に行き来でき、統一感のある購買体験を提供することです。そのため、チャネルごとの顧客の囲い込みは避けなければなりません。単一のチャネルに依存したりチャネル間で競争したりするのではなく、相互補完的な連携を重視し、顧客の満足度や企業全体の利益を優先させましょう。
そのためには、チャネル間で共通の目標を掲げることが重要です。チャネルごとの目標だけでは、どうしても「他のチャネルに顧客を奪われたくない」という競争が発生しやすくなってしまいます。異なる販売チャネルが協力して一体となれるような、わかりやすい目標を設定しましょう。
オムニチャネルの運用においては、ツールを積極的に活用し、業務の効率化を図ることが不可欠です。適切なツールがなければ、異なる販売チャネルや顧客との接点から得られる膨大なデータを管理し解析できません。
たとえば、CDP(カスタマー・データ・プラットフォーム)は、複数のチャネルでの情報を一元化して顧客の行動や嗜好を分析するのに適しています。これにより、販売戦略やマーケティング施策の最適化が可能です。
また、FAQやチャットボットなどの顧客対応ツールは、円滑な顧客コミュニケーションを支援し、顧客体験の向上に役立ちます。
ツールの選定に際しては、それらが自社のビジネスプロセスにマッチすることはもちろん、他のツールと連携しやすいかどうかも重要です。選択したツールが連携しやすいものであれば、異なるチャネルやプラットフォームでのデータを一元管理しやすくなるでしょう。
前述のとおり、企業のオムニチャネル化にはCDPが有効となります。当社の「WOW engage(ワオエンゲージ)」は、CDPによる顧客データの統合や分析、さらにメールやSMS、LINEなどのメッセージ配信をワンパッケージで実現できるエンゲージメントソリューションです。
「WOW engage」を利用すれば、オンライン・オフラインを問わず、顧客情報や購買履歴、行動履歴などのデータを分析することができます。たとえば、顧客が実店舗とECサイトでの購入履歴からどのような購買傾向を持っているか、といった情報の解析が可能です。
さらに、こうして得られた分析結果をもとにマーケティング戦略を立案し、メールなどのメッセージ配信機能で「顧客が喜ぶ情報」や「売上を最大化するためのコンテンツ」を必要なタイミングで届けることができます。
当社では、「顧客データを統合してオムニチャネル化を進めたい」「一貫性のある顧客体験を提供したい」という企業様に対し、「WOW engage」を活用したマーケティングの全体設計やコンサルティングを行っておりますので、ご興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
オムニチャネルとは、現代の多様なデジタル環境において、企業がオンラインやオフラインといった販売経路を統合し、一貫性のある顧客体験を提供する販売戦略です。 顧客の購買行動が多様化し、さまざまなプラットフォームでの接点が増えている中で、オムニチャネルは企業が顧客に一貫性のある顧客体験を提供する手法として注目を集めています。
一貫性のある顧客体験はブランドの信頼性を高め、顧客満足度の向上につながるのが利点です。また、導入により在庫の最適化や機会損失の低減なども期待できるため、オムニチャネルは企業にとって競争の優位性を築くための重要な手段となってきています。
ぜひ、本記事を参考にして理解を深め、オムニチャネル化を進めてみてください。顧客との強固な関係を築き、企業価値を高める契機となるでしょう。
エンゲージメントソリューション「WOW engage」でできること、導入メリット、主な機能など、
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